「児童自立支援施設」試論 補遺その1

児童自立支援施設の定員充足率。平成19年では、44,7%。この数字、ここ10年はおろか20年余り変わっていない。平成18年、児童自立支援施設のあり方に関する研究会で示された機能強化、将来構想。ある意味で、児童自立支援施設側の危機感が反映されたものとも私は見ている。というのも、少年によるショッキングな事件が報じられ、厳罰化の世論が大きく渦巻いた時期でもある。
福祉よりも刑罰を科すべきだ、そうした強い世論の中で、児童自立支援施設においては、事件の被害者にも配慮した処遇、つまり「罪と向き合う」処遇を展開する必要に迫られた。「正しいこと」あるいは「規範」をどう教え込むか、子どもたちの抱える問題が相対的に変化していることを感じつつも、世論の要請にどう応えるべきなのか、その間で揺れ動く現場。そして振り回される子どもたち。


すがるべき援助技術が、力を背景にしたもの、援助関係の非対称性に基づく一方的なものであってよいのだろうか。混乱する現場を一時的に力で制圧することに追われている、例えば、入所児童の警察への任意同行を他の児童に見せるなどの行為に愛知学園は頼った。この行為に愛知学園あり方検討委員会は、容認できないと断じた。当然の指摘かのように思えたが、メディアを見渡すと賛成する意見もかなりあったように記憶している。

児童自立支援施設における支援のあり方が見えてこない中で、施設の今までの実践が、失われることを理由にして、機能強化・将来構想は何の意義があるのだろうか。援助者側の都合ありきでないと信じたい。

とはいえ今もって尚報告される職員による児童への暴行事案。国立の施設でも報告をされており、本当に児童自立支援施設の実践のどこに引き継ぐ意味、価値があるのか、それが問われている。機能強化は職員の仕事を増やすことではない。今のまま仕事を増やしたとしても、根本的な問題は何も解決しない。