シングルパパの僕に本がくれたもの

 子育てで大事にしていることって何だろう。パパ歴もうすぐ10年。パパとして自分は何を大事にしているのだろう。ちょっとだけ綴ろうと思う。


 私は生まれてから18歳まで、施設や里親の下で生きてきた。とある肢体不自由児施設で暮らしていた時、そこでは上級生が20時になったら、館内放送の機材を使って本読みをするという当番があった。


 昔から本を読むのは大好きだった。本に登場する様々な人物、キャラクター、あるいは世界観が繰り出す喜怒哀楽を考えること、それを声で表現することがとても自分にとっては居心地がよかった、それが好きになったきっかけかもしれない。本を読んでいる時は、自分の置かれている現状を何も考えず、本の世界に浸ることができる。


 もう1つ理由がある、それは本を読むことによって、自分の役割、自信を持てたからかもしれない。施設時代、当番制だったが2人で代わる代わる行っていた。低学年の子ども20人くらいに読み聞かせをしていたことになる。読む本は、自分のチョイスだったり、子どもからのリクエストだったりで、結構自由だった。本を読む回数を重ねるにつれ、あれを読んでほしい、これを読んでほしいと、本来1冊でいいのに、2冊や3冊も読んだことがある。
 子どもたちからの評判は意外によくて、あ、自分にも人に喜ばれることができるんだと感じた。そんな小さなことで自信を持てるのだから、けっこう単純な人間なのかもしれない。とはいえ誰かの役に立っていることを実感することは、小さい時こそ大事な体験なのだなと思う。


 本を読むこと、大人になってからも仕事で、あるいは家庭でも続けることになったのはちょっと意外な展開だったが、幼少期の経験、子ども時代の経験があったからこそ、そうなっていると思うので、本との出会いには感謝したい。


 パパになって自分にできることは何だろう。今は亡き妻に話をしたときに、「本を読んでよ、私も聞きたい」と言われて、自分にはそれが一番できることだし、よしやろうと決めた。最近は、読んでいる途中で寝てしまうダメパパな時もあるけど、続けている。本がくれたものを今度は、息子たちにみつけてほしい。そんな思いで続けている。
 
 シングルになっても続けている。付き合っている時も妻と一緒によく本の読み合いっこをした。よく考えればわざわざ音読するなんて、ちょっと変わっているかもしれないが。本を読む時間は、妻との大切な時間だった。そう思えば、本はいろいろなものをくれたんだな、改めて本との出会いに感謝。