はじめの一歩を踏み出す ―児童自立支援施設、社会的養護への眼差しを変えるために―

いつもブログを読んでくださっている皆様、明けましておめでとうございます。拙いブログではありますが、今年もできる限り自分らしく綴っていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

毎年年初は、いくつかやりたいこと、考えていることを列挙しているのですが、今年は1つに絞って書き進めることにします。


今一番やらなければならないことは何か。2012年は機会を見つけては、勉強会やセミナーに参加し、また文献を読み深めるなどして、どちらかというとインプットの機会をつくるようにしてきた。大きな地震があって日本は変わるのだろうか、そんなどこか曖昧模糊とした疑問を持つ一方で、それまで見守り、関わり続けてきた課題はどうなるのだろうかという不安を抱えていた。尚且つ、その疑問や不安に対して、自らの関わり方はどうあるべきなのかということを考えるきっかけが欲しかった。



今回は、後者の関わり続けてきた課題について、今の思いと今後に向けての展望を綴ることにしたい。
2012年は、社会的養護に関連する勉強会、セミナーに数多く参加させて頂いた。様々に得られる出会いと視座の中に身を置いていると、日本の社会的養護は変わるんだ、大丈夫だという安堵すらちらついたこともあった。しかしそう現実は甘くない、そんな声もうかがう機会もあった。


(※ 以下、社会的養護のもとで育った人間の1人として、問題意識を綴ることにする。)

日本の社会的養護というと、そのほとんどが児童養護施設と里親を取り上げられる。ここ数年のいわゆるタイガーマスクによる物品等の寄付は概ね児童養護施設が主なターゲットになっている。そして、NPOの活動もその多くが児童養護施設や里親を対象としている。私はこの動き、NPOの動向については、とても強い危機感を持っている。
「社会的養護」の中でも、ほとんど語られることのない児童自立支援施設、母子生活支援施設や情緒障害児短期治療施設。また養護上の理由で入所した若者も多く暮らしているいわゆる「障害児系の入所施設」や「少年院」「少年刑務所」。「施設」の間でも関心の温度差が一層拡大する状況になりつつあるのではないか、私の危機感の1つはこれである。

とりわけ私が気にしているのは、児童自立支援施設と少年院(少年刑務所)である。このブログでも取り上げたが、児童自立支援施設にしろ、少年院や少年刑務所にしろ、ケアのあり方、自立支援のあり方や家族関係、地域とのつながりなど様々な課題を抱えている。施設の課題については、専門家や施設職員の声は出てくるが、肝心要の入所者の声がほとんど出ていない。そうした状況にある中で、いわば第3者のようなあるいは、アンバランスな援助関係を踏まえていない「大人の声」だけでは、施設の実態、ケアのあり様をつまびらかにはできないだろう。
それは、自立支援施設に限らないのだろう。児童養護施設等でもそうした大人の声は余りに大きい。このような状況を専門家や施設職員はどう見ていらっしゃるのだろうか。戦後、様々な経過を踏まえて現在の施設があるのだけれども、どこまで施設で暮らす若者の営みを大人の声で向上させてきたのだろうか。よもやもっと大きな声を張り上げる必要があるとお思いの方はいらっしゃらないだろうけど、声を出す以前に、施設における職員と若者との関係を問い直す試みを行うことがまず必要なのではなかろうか。それがなければ、大人の声を大きくすればいいという、無力感に満ちた選択を今後もとり続けることになるのだろう。それは、若者にとっても、そして職員にとっても展望が開ける選択ではない。



年末の忘年会、そこで2013年やらなくてはいけないねと、同じく児童自立支援施設で暮らした仲間16人と決めたことがある。それは、児童自立支援施設出身者の居場所をつくること。児童自立支援施設は今もって当事者団体が存在しない。ここは児童養護施設とは現状において、大きな違いである。施設暮らしを経験してきた若者がを安心して集える、そして退所後の様々な思いをシェアできる場が必要だ。そして居場所をつくるもう1つの理由として、当事者団体がないゆえに、職員と入所者である若者とのアンバランスな関係が続き、教護院での実践を引き摺りすぎているのではないか、という思いがある。適切な権利擁護を行うためにも当事者団体の立ち上げは必須であると考えるに至った。

実は何年も前から、そういう話は仲間としてきた。しかし、なかなか踏み切れないでいた。児童自立支援施設に対するネガティブイメージが、施設職員や施設経営者の中にすらある状況で、当事者団体を立ち上げ、居場所をつくっても本当に共感の輪が広がり、安心できる居場所にできるのだろうかという不安もあった。


ただ不安があろうとも前に進まなければ変わらない。1人でも多くの方に自立支援施設のあり方に関心をもって頂けるよう、2013年に当事者団体を立ち上げたい。


今年もいろんなことが起きそうだけれども、出会いとつながりを大事にしながら、初めの1歩を踏み出したい。