旅立ちの春に寄せて

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。もう2年経つのかと思うと、何だかせつない気持ちに浸ってしまいます。皆さんが過ごした学生生活、振り返るとほんといろんなことがありました。政権交代が行われ、様々な社会的な問題に多くのアクターが積極的にアクションを起こしそれらに注目が集まったり、ソーシャルメディアが各所で盛り上がったり、日本の新しい一歩がどんな一歩になるのか、注目された時期といえるでしょう。他方海外では、アラブの春などの民主化運動、欧州の経済危機など後世にも語り継がれるであろう出来事が続きました。


そして、忘れられないこと、東日本大震災と福島の原発事故。多くの人が地震津波放射能によって生活を奪われ、今も震災後の様々な障壁との闘いを強いられています。震災後、救援活動に従事し、目の前で起こる様々な出来事に右往左往し、さてどうこれを皆さんに伝えるべきなのか、苦悩し続けました。その苦悩に寄り添ってくれたのは、何よりみなさんでした。被災地で起きていることに、どう寄り添い、関わっていくことができるのか、本当にたくさんの時間議論し、行動に移してきました。


卒業論文、まとまって正直ほっとしています。卒業論文はまさに皆さんの学びの大切な証しであるからです。何をどう学び、深めることができたのかということを示す大切な足跡を表している卒業論文。東北の地での学び、児童館での学び、保育所での学び、里山での学び、スポーツクラブでの学び、いろんなところで学び、そして突き付けられた問題に懸命にぶつかってきた、その結果が今こうして形になっています。もちろん、十分ではないところもあるでしょう。もっと深めたいというところもあるでしょう。


学ぶという事は実はとても主体的なことである一方で、いろんな人との関わりの中で成り立つものだと考えます。自分なりに考え、あれこれ議論しながら、全力で学びに傾注した姿に、私は感謝したいです。何事も全力で取り組むということは、できるようでいて簡単ではありません。まして皆さんは部活、課外活動などもあり忙しかった時もあるでしょう。そして、いろんな葛藤もあったであろう中で全力を傾けて下さった皆さん、本当にありがとうございました。


これから大学院に、海外に、そして福祉、教育や保育の現場に旅立つ皆さん、これからも私は全力で応援しています。旅立ちの春、皆様のこれからの長い旅路がよきものであるよう、心から期待しています。


(2012年度卒業論文集「轍」前文より転載)